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空き家管理

コラム

公開日:2026年7月4日(最終更新日:2026年8月3日) 空き家

相続人がいない空き家はどうなる?国庫帰属までの流れと対処法を解説

相続人がいない空き家はどうなる?国庫帰属までの流れと対処法を解説

相続人が誰もいない空き家は、管理する人が不在となり、放置による老朽化や近隣トラブルにつながる可能性があります。本記事では、相続人不存在となる理由や法的な手続き、空き家の管理・処分方法、専門家へ相談するメリットについて詳しく解説します。

空き家の相続人が誰も居ないケースとは

近年、持ち主が亡くなった後に引き継ぐ人がおらず、放置されてしまう空き家が全国的に増えており、社会問題となっています。ここでは、なぜ空き家の相続人が誰も居なくなってしまうのか、その法的な定義や具体的な背景についてわかりやすく解説します。

相続人不存在の定義と民法の考え方

法律上、亡くなった方の財産を引き継ぐ人が誰もいない状態のことを「相続人不存在(そうぞくにんふざい)」と呼びます。民法では、亡くなった方に配偶者や子ども、親、兄弟姉妹などの法的な相続人が一人もいない場合、または相続人にあたる人たちが全員「相続放棄(財産を引き継がない手続き)」をした場合に、この相続人不存在にあたると定められています。

民法の基本的な考え方として、引き継ぐ人がいない財産は最終的に国のもの(国庫への帰属)になるとされています。しかし、持ち主が亡くなってすぐに自動的に国のものになるわけではありません。法的な手続きを経て財産を整理していく必要があります。

よくある空き家問題と背景

相続人が誰もいない空き家が発生する背景には、現代の日本が抱えるいくつかの社会的な要因があります。代表的な原因として、以下の3つのケースが挙げられます。

1つ目は、少子高齢化や一人暮らしの高齢者の増加です。結婚をしない方や、子どもがいない高齢者の方が増えたことにより、身寄りのない状態で亡くなるケースが多くなっています。遺言書なども残されていない場合、空き家を引き継ぐ人が誰もいなくなってしまいます。

2つ目は、相続人全員による相続放棄です。空き家が遠方にあったり、老朽化が進んでいて管理が難しかったりする場合、相続人が「引き継ぎたくない」と考えて相続放棄を選ぶことがあります。また、亡くなった方に借金などのマイナスの財産が多い場合も、相続放棄が行われやすくなります。その結果、誰も引き継ぐ人がいなくなり、空き家が取り残されてしまいます。

3つ目は、親族との関係が希薄になっていることです。法律上の相続人が見つかったとしても、普段から交流がない場合、自分が相続人であることを知らなかったり、関わりを避けたりすることで、空き家がそのまま放置されてしまうケースもあります。

空き家の相続人が誰も居ない場合の流れ

相続人が誰もいない空き家は、そのまま放置されるわけではありません。法律に基づき、適切な管理や処分を行うための手続きが進められます。ここでは、相続人がいない場合にどのような流れで手続きが進むのか、順を追ってわかりやすく解説します。

相続財産法人の成立とは

相続人が誰もいない場合、亡くなった方の遺産(空き家や預貯金など)は、自動的に「相続財産法人(そうぞくざいさんほうじん)」という一つのまとまりになります。

通常、亡くなった方の財産は相続人が引き継ぎますが、引き継ぐ人が誰もいないときは、財産そのものを一つの法人として扱い、管理や処分の手続きを進めるための受け皿とする仕組みです。これにより、空き家などの財産を清算するための法的な準備が整います。

家庭裁判所での手続きの概要

相続財産法人が成立しただけでは、空き家の売却や片付けを勝手に進めることはできません。手続きを具体的に進めるためには、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して申し立てを行う必要があります。

この申し立てを行うことができるのは、お金を貸していた人(債権者)や、亡くなった方と特別な関係があった人(特別縁故者)、あるいは地方自治体などの「利害関係人」、または「検察官」です。家庭裁判所は申し立てを受け取ると、財産を適切に管理・処分するための手続きを開始します。

相続財産清算人の選任

家庭裁判所での手続きが始まると、裁判所は財産を管理・清算する役割を持つ「相続財産清算人(そうぞくざいさんせいさんにん)」を選びます。これまでは相続財産管理人と呼ばれていましたが、法律の改正により現在は相続財産清算人という名称になりました。

相続財産清算人には、地域の司法書士や弁護士などの専門家が選ばれるのが一般的です。選ばれた清算人は、亡くなった方の財産や借金を調査し、債権者への支払いや、特別にゆかりのあった人への財産引き渡しなどを行います。最終的に引き取り手がなく残った空き家やお金は、国の財産(国庫)に帰属することになります。

空き家の管理や処分はどうなるのか

相続人が誰もいない空き家は、誰が管理し、どのように処分されるのでしょうか。ここでは、管理の責任が誰にあるのか、売却や解体はできるのか、そして税金などの維持費は誰が支払うのかについて分かりやすく解説します。

空き家の管理責任は誰が負うのか

相続人が誰もいない場合であっても、空き家をそのまま放置して良いわけではありません。法律上、相続人がいない財産は「相続財産」という一つのまとまりとして扱われ、最終的には国のもの(国庫帰属)になります。

しかし、国がすぐに自動で管理を始めてくれるわけではありません。法律のルールでは、家庭裁判所によって「相続財産清算人(そうぞくざいさんせいさんにん)」という管理者が選ばれるまでの間、直近までその家を実際に管理・使用していた人(占有していた人)や、すべての相続人が相続放棄をした場合の放棄者などが、次の管理者に引き渡すまでの間、必要な範囲で管理を続けなければならないとされています。

誰も管理できない状態が続くと、近隣への迷惑や危険が生じるため、最終的には家庭裁判所が選んだ専門家が管理を引き継ぐことになります。

売却や解体は可能か

相続人が誰もいないからといって、近隣の住民や自治体が勝手にその空き家を売却したり、解体したりすることはできません。個人の財産を勝手に処分することは法律で禁止されているためです。

空き家を売却したり解体したりするためには、家庭裁判所に申し立てを行い、代理人となる「相続財産清算人」を選んでもらう必要があります。選ばれた相続財産清算人は、家庭裁判所の許可を得た上で、空き家を売却して現金に換えたり、建物の傷みが激しく危険な場合には解体したりする手続きを進めることができます。

このように、公的な手続きを経ることで初めて、空き家の売却や解体が可能になります。

固定資産税や維持費の扱い

空き家にかかる固定資産税や、維持管理のための費用は、本来であれば亡くなった方の財産から支払われるべきものです。

相続財産清算人が選ばれた後は、亡くなった方の預貯金などの財産の中から、固定資産税の支払いや建物の維持費が支払われます。もし、亡くなった方に十分な財産がない場合は、空き家を売却して得たお金から支払われることになります。

清算人が選ばれるまでの間は、税金が滞納状態になることが一般的です。自治体は、滞納された税金を回収するために、自ら家庭裁判所へ相続財産清算人の選任を申し立てるなどの対応を取ることがあります。

利害関係人が取るべき対処法

空き家の相続人が誰もいない場合、放置された空き家の近くに住む人や、亡くなった人にお金を貸していた人などは、大きな不利益を被る可能性があります。このように、空き家に関して法律上のつながりや影響を受ける人を「利害関係人(りがいかんけいにん)」と呼びます。ここでは、利害関係人が取ることのできる具体的な対処法について解説します。

近隣住民ができる対応

空き家の隣に住んでいる方や近隣住民の方は、建物の倒壊や害虫の発生、悪臭などの被害を受ける恐れがあります。このような場合、近隣住民も利害関係人として、家庭裁判所に「相続財産清算人(そうぞくざいさんせいさんにん)」の選任を申し立てることができます。相続財産清算人とは、誰も引き継ぐ人がいない財産を管理・整理する人のことです。

ただし、この申し立てを行うには、裁判所に「予納金(よのうきん)」と呼ばれる数十万円から100万円程度の費用を一時的に納めなければならないことが多く、個人で手続きを行うのは金銭的な負担が非常に大きくなります。

そのため、近隣住民の方が個人で申し立てを行うのは難しいケースが多いため、まずは被害の状況を記録し、後述する自治体の相談窓口へ連絡することをおすすめします。

債権者や関係者の申立て方法

亡くなった人にお金を貸していた債権者や、空き家となっている不動産に担保(抵当権など)を設定している金融機関などは、明確な利害関係人にあたります。これらの債権者は、貸したお金を回収するために、家庭裁判所へ相続財産清算人の選任を申し立てることができます。

申し立ての手続きは、空き家の所有者であった亡くなった人の、最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。手続きに必要な主な書類は以下の通りです。

  • 申立書(裁判所の窓口などで取得できます)
  • 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 亡くなった人の住民票の除票
  • 空き家の登記事項証明書(登記簿謄本)
  • お金を貸していることや、担保権があることを証明する書類(契約書など)

申し立ての際には、裁判所から予納金の支払いを求められます。この予納金は、空き家を売却した代金などから将来的に回収できることもありますが、売却額が安かった場合などは回収できないリスクがあることも理解しておく必要があります。

自治体への相談先

空き家の問題で困ったときは、その空き家がある市区町村の役場に相談するのが最も現実的な方法です。多くの自治体には、空き家問題を専門に扱う「空き家対策課」や「建築課」などの窓口が設置されています。

自治体は、法律に基づいて空き家の所有者や相続人がいるかどうかを調べる権限を持っています。調査の結果、本当に相続人が誰もいないことが判明した場合、自治体自身が利害関係人として、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てるケースもあります。

役場のどの部署に相談すればよいか分からない場合は、代表窓口で「近所の空き家が放置されて困っている」と伝えることで、適切な担当部署を案内してもらえます。相談する際は、空き家の写真や、発生している被害(害虫や建物の破損など)のメモを持参すると、話がスムーズに進みやすくなります。

空き家問題を放置するリスク

相続人が誰もいないからといって、空き家をそのまま放置しておくことには大きなリスクが伴います。管理されない空き家は急速に劣化し、周囲に深刻な悪影響を及ぼすため、法律や安全面での問題が発生します。ここでは、空き家を放置することで生じる代表的な2つのリスクについて解説します。

特定空家に指定されるリスク

適切な管理がされていない空き家は、法律に基づき自治体から「特定空家(とくていあきや)」に指定される可能性があります。特定空家に指定されると、自治体から改善を求める指導や勧告を受けることになります。

もし自治体からの勧告を受けると、それまで受けられていた土地の固定資産税の優遇措置が適用されなくなります。その結果、土地にかかる固定資産税が実質的に最大で6倍に増えてしまう仕組みになっています。

さらに、自治体からの命令を無視し続けると、過料という罰金のようなものが科されたり、自治体が強制的に建物を解体する「行政代執行(ぎょうせいだいしっこう)」が行われたりします。この解体にかかった費用は、後から全額請求されるため、放置することは決して解決にはなりません。

倒壊や損害賠償の可能性

誰も住んでいない家は、換気や手入れが行われないため、想像以上の早さで老朽化が進みます。柱が腐食したり、屋根や外壁が傷んだりした状態を放置すると、台風や地震などの災害時に建物が倒壊する危険性が高まります。

もし建物の一部が崩れて通行人に怪我をさせたり、隣の家を壊してしまったりした場合、その建物の管理責任がある人が多額の損害賠償を支払わなければならない可能性があります。過去には、空き家の倒壊や落下物によって数千万円規模の賠償金が発生した事例もあります。

また、手入れのされていない庭にゴミが不法投棄されて悪臭や害虫が発生したり、放火の被害に遭いやすくなったりするなど、近隣住民の生活を脅かすトラブルの原因にもなります。周囲に迷惑をかけないためにも、空き家を放置し続けることは避けなければなりません。

専門家に相談するメリット

空き家の相続人が誰もいない場合、家庭裁判所への手続きなど、専門的な知識が必要な場面が多くあります。自分一人で進めるのは非常に困難なため、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家に依頼することで、手続きをスムーズに進められるだけでなく、精神的な負担も大きく軽減されます。

司法書士や弁護士の役割

相続人がいない空き家の問題を解決するためには、家庭裁判所に「相続財産清算人(そうぞくざいさんせいさんにん)」を選んでもらうための申し立てを行う必要があります。この手続きを進めるにあたり、司法書士や弁護士はそれぞれ重要な役割を果たします。

司法書士は、裁判所に提出する書類の作成や、亡くなった人の戸籍謄本などの収集を代行してくれます。戸籍謄本の収集は、亡くなった人の出生から死亡まですべてをさかのぼる必要があり、一般の方にとっては非常に時間と手間がかかる作業です。司法書士に依頼することで、こうした複雑な書類集めを正確かつ迅速に行ってもらえます。

弁護士は、法律の専門家として、手続き全体の代理人となることができます。もし利害関係者との間でトラブルや複雑な権利関係がある場合は、交渉や法的な解決まで一貫して任せることができます。状況に応じて、どちらの専門家に相談すべきか判断するとよいでしょう。

費用相場と依頼の流れ

専門家に相談・依頼する際の費用相場と、実際の手続きの流れは以下の通りです。

費用相場

専門家へ支払う報酬の目安は、申し立て手続きの代行で約10万円から30万円程度です。ただし、これとは別に、家庭裁判所に納める「予納金(よのうきん)」が必要になることがあります。予納金は、空き家の管理費用や清算人の報酬に充てられるもので、財産の状況によっては数十万円から100万円程度かかる場合もあります。具体的な金額は個々の状況によって異なるため、事前に見積もりを取ることが大切です。

依頼の流れ

まずは専門家の無料相談などを利用して、現在の空き家の状況や困っていることを伝えます。依頼することが決まったら、正式に契約を結びます。その後、専門家が戸籍謄本などの必要書類を収集し、申し立て書を作成します。準備が整い次第、家庭裁判所へ申し立てを行い、裁判所によって相続財産清算人が選ばれることで、空き家の管理や処分に向けた手続きが本格的に始まります。

まとめ

相続人がいない空き家は、自動的に国の所有になるわけではなく、家庭裁判所での手続きや相続財産清算人の選任が必要です。放置すると税負担や損害賠償リスクもあるため、早めに自治体や専門家へ相談し、適切な管理・処分を進めることが大切です。

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