親が亡くなった後も実家に住み続けることは可能ですが、相続登記や遺産分割協議などの手続きを適切に進める必要があります。また、相続人とのトラブルや固定資産税、相続税などの費用面にも注意が必要です。この記事では、親名義の家に住み続けるための条件や相続手続きの流れ、税金や注意点をわかりやすく解説します。
亡くなった親の家に住むことはできる
親が亡くなった後、その実家にそのまま住み続けることができるのか、不安に思う方も多いのではないでしょうか。結論からお伝えすると、亡くなった親の家に住み続けることは可能です。ただし、そのためにはいくつかの条件をクリアし、適切な手続きを行う必要があります。
亡くなった親の家にそのまま住むことは可能です
親が所有していた家に、子がそのまま住み続けること自体は法律上も問題ありません。親と同居していた場合であれば、引っ越しをすることなくそのまま生活を続けることができます。また、親が亡くなった後に空き家となった実家へ移り住むことも可能です。
しかし、家や土地の所有者が亡くなった親の名義のままになっている状態は、一時的なものにすぎません。そのまま放置してしまうと、将来的に家を売却したくなったり、リフォームをしたくなったりしたときに、自分の意思だけでは進められなくなるなどの問題が発生します。そのため、住み続けることは可能ですが、名義をしっかりと変更することが前提となります。
親名義の家に住み続けるための条件と必要な手続き
亡くなった親の家に安心して住み続けるためには、主に以下の条件を満たし、手続きを進める必要があります。
まず1つ目の条件は、他の相続人の同意を得ることです。親の残した財産は、子ども全員などの「法定相続人」全員の共有財産となります。そのため、自分ひとりがその家に住み続けることについて、ほかの兄弟姉妹などの相続人から納得を得る必要があります。
2つ目の条件は、家と土地の名義を自分に変更することです。この名義変更の手続きを「相続登記」と呼びます。2024年4月からは相続登記が義務化されており、原則として相続が発生したことを知ってから3年以内に行わなければなりません。名義変更を行うためには、相続人全員で誰が家を引き継ぐかを話し合う「遺産分割協議」を行い、合意内容をまとめる必要があります。
具体的な手続きの流れや、発生する税金、注意すべきトラブルなどについては、続く章で詳しく解説していきます。
亡くなった親の家に住むための相続手続きの流れ
亡くなった親の家にそのまま住み続けるためには、法律に基づいた適切な相続手続きを進める必要があります。手続きを放置すると、将来的に大きなトラブルにつながることもあるため、一つひとつの手順を丁寧に進めていきましょう。ここでは、手続きの具体的な流れを3つの手順に分けて解説します。
遺言書の有無を確認する
親が亡くなった後、最初に行うべきことは「遺言書」が残されているかどうかの確認です。遺言書があるかないかによって、その後の手続きが大きく変わるためです。
もし遺言書が見つかり、そこに「家を特定の人に譲る」という内容が書かれていれば、原則としてその遺言書の指示に従って手続きを進めます。遺言書は、自宅の金庫や引き出しに保管されているほか、公証役場や法務局に預けられていることもあります。自宅で見つかった自筆の遺言書は、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所で「検認」という内容確認の手続きを行う必要がありますので注意しましょう。
相続人全員で遺産分割協議を行う
遺言書が見つからなかった場合は、法律で定められた相続人全員で、誰がどの財産を引き継ぐかを話し合います。この話し合いのことを「遺産分割協議」と呼びます。
親の家に住み続けたい場合は、この話し合いの中で「自分がこの家を相続したい」という希望を伝え、他の相続人から合意を得る必要があります。相続人のうち一人でも反対していると、話し合いはまとまりません。全員の合意が得られたら、その内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名と実印での押印を行います。この書類は、その後の名義変更手続きで必ず必要になります。
不動産の名義変更登記(相続登記)を行う
遺産分割協議がまとまったら、最後に家の名義を亡くなった親から実際に住む人の名義へと変更します。この手続きを「相続登記」と呼びます。
名義変更を行うためには、法務局に必要な書類を提出して申請します。遺産分割協議書や親の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書など、多くの書類を準備する必要があります。なお、2024年4月からは相続登記が法律で義務化されました。
不動産を相続したことを知ってから3年以内に名義変更を行わないと、10万円以下の過料という罰則が科される可能性があります。手続きが複雑で難しいと感じる場合は、専門家である司法書士に相談することをおすすめします。
親が亡くなった後の家に住む場合の注意点とトラブル対策
亡くなった親の家に住み続けることは可能ですが、事前の対策を怠ると、他の親族との間で思わぬトラブルに発展することがあります。ここでは、後々のトラブルを防ぐために知っておくべき注意点と具体的な対策について解説します。
他の相続人から賃料や金銭を請求されるリスク
親の家に同居していた場合、親が亡くなった後も遺産分割が決定するまでは、無償で住み続ける権利が認められる傾向にあります。しかし、同居していなかった子どもが親の死後に勝手に住み始めた場合や、遺産分割の話し合いが長引いている場合には、他の相続人から「家賃に相当するお金を支払ってほしい」と請求されるトラブルが起こり得ます。
また、遺産分割によって家が他の相続人のものになったり、複数人の共有名義になったりした後は、当然ながら無償で住み続けることは難しくなります。他の相続人から賃料を請求されたり、立ち退きを求められたりするリスクを避けるためにも、誰が家に住むのかを早期に話し合い、合意を得ることが大切です。
共有名義ではなく単独名義で相続すべき理由
親の家をきょうだいなどの複数人で分ける際、「全員の共有名義にすれば公平だ」と考えてしまうことがあります。しかし、不動産を共有名義にすることは将来的な大きなトラブルの原因となるため、避けるべきです。家に住む人の「単独名義」で相続することをおすすめします。
共有名義にしてしまうと、将来その家を売却したり、大規模なリフォームをしたりする際に、共有者全員の同意が必要になります。また、共有者の一人が亡くなると、その子どもや孫に権利が引き継がれ、名義人がどんどん増えてしまい、最終的に誰の持ち物なのか分からなくなってしまうリスクもあります。住む人が単独で所有権を持つことで、将来の管理や処分をスムーズに行うことができます。
固定資産税や維持費の負担者を明確にする
家に住み続けるにあたっては、毎年かかる固定資産税や、日々の維持管理費(修繕費や火災保険料など)が発生します。これらの費用を誰が支払うのかを明確にしておかないと、後から親族間で揉める原因になります。
原則として、その家に住んで利益を得ている人がこれらの維持費を負担することが一般的です。しかし、名義変更の手続きが済んでいない状態では、代表者宛てに納税通知書が届くため、誰がいくら支払うのか曖昧になりがちです。トラブルを防ぐためには、話し合いの段階で「家に住む人が固定資産税や維持費のすべてを負担する」といった内容を明確に決め、書面に残しておくことが重要です。
亡くなった親の家に住む場合の税金と費用
親の家に住み続けるためには、相続時やその後に発生する税金・費用について正しく理解しておくことが大切です。ここでは、相続税の基本や名義変更にかかる費用、毎年支払う必要のある税金についてわかりやすく解説します。
相続税が発生する基準と小規模宅地等の特例
親が亡くなって家を相続する際、すべての人に相続税がかかるわけではありません。相続税には「基礎控除」と呼ばれる非課税枠があり、遺産の総額がこの基準以下であれば相続税はかかりません。
基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算されます。例えば、相続人が子ども2人の場合、遺産の合計が4,200万円以下であれば相続税の申告や納税は不要です。
また、亡くなった親の家に同居していた子どもなどがその家を引き継ぐ場合、「小規模宅地等の特例」を利用できる可能性があります。この特例が適用されると、土地の評価額が最大で80%減額されるため、相続税の負担を大幅に抑えることができます。
ただし、特例の適用には「親と同居していたこと」や「相続税の申告期限まで住み続けること」など、細かい要件を満たす必要があります。要件に当てはまるかどうかは、事前に税理士などの専門家に確認することをおすすめします。
名義変更にかかる登録免許税と司法書士費用
親名義の家を自分の名義に変更する(相続登記を行う)際には、国に納める「登録免許税」という税金がかかります。登録免許税の金額は、不動産の「固定資産税評価額」の0.4%と法律で定められています。例えば、評価額が1,000万円の土地と建物であれば、登録免許税は4万円になります。
名義変更の手続きは自分で行うことも可能ですが、戸籍謄本の収集や登記申請書の作成など専門的な知識が必要となるため、司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士に依頼する場合、手続きの代行費用(報酬)として、一般的に数万円から10万円程度の手数料が別途発生します。不動産の数や状況によって費用は変動するため、あらかじめ見積もりを取っておくと安心です。
毎年かかる固定資産税と都市計画税
家を相続して住み続けると、相続時の費用だけでなく、毎年かかる維持費としての税金も発生します。それが「固定資産税」と「都市計画税」です。
固定資産税は、毎年1月1日時点でその不動産を所有している人に対して課される税金です。税額は、市町村(東京23区は都)が定める固定資産税評価額に、原則として1.4%の税率を掛けて計算されます。また、市街化区域と呼ばれる地域に家がある場合は、さらに最大0.3%の都市計画税が上乗せして課税されます。
住宅が建っている土地については、税金が安くなる特例(小規模住宅用地の特例)が適用されているため負担が抑えられていますが、家を壊して更地にしてしまうとこの特例が外れ、固定資産税が最大で6倍に跳ね上がることがあります。親の家にそのまま住み続けることは、税金の負担を抑える面でもメリットがあります。毎年の納税通知書を確認し、計画的に納税資金を準備しておきましょう。
まとめ
亡くなった親の家に住み続けるには、遺言書の確認や遺産分割協議、相続登記などの手続きが欠かせません。共有名義を避け、税金や維持費の負担を明確にすることで将来のトラブルを防ぎやすくなります。不安がある場合は、司法書士や税理士などの専門家に相談し、円滑に相続手続きを進めることが大切です。








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