家の売却は人生で何度も経験することのない大きなイベントです。そのため、少しの判断ミスが大きな損失やトラブルに繋がることも。この記事では、後悔しない取引を実現するために、売却前の準備から売却活動中、契約後の引き渡しまで、各フェーズで「絶対にやってはいけないこと」をプロの視点から解説します。
家の売却前の準備でやってはいけないこと
相場を調べずに査定を依頼すること
家の売却を考え始めたとき、まず不動産会社に査定を依頼する方が多いでしょう。しかし、事前にご自身の家の相場を調べずに査定を依頼することは避けるべきです。なぜなら、相場を知らないと、不動産会社から提示された査定額が適正な価格なのか判断できないためです。相場よりも大幅に低い価格で売却してしまったり、逆に高すぎる査定額に惑わされて売却機会を逃してしまう可能性があります。
ご自身で相場を調べるには、国土交通省の「土地総合情報システム」で過去の不動産取引価格を検索したり、複数の不動産ポータルサイトで近隣の類似物件の売り出し価格を比較したりする方法があります。これらの情報を参考に、おおよその市場価格を把握しておくことが、適切な売却価格設定の第一歩となります。
複数の不動産会社に査定を依頼しないこと
家の売却を成功させるためには、複数の不動産会社に査定を依頼することが非常に重要です。一社だけに査定を依頼すると、その査定額が本当に適正なのかどうかを比較検討する基準がありません。不動産会社によって査定額や売却戦略、得意な物件の種類、担当者の専門性などが異なるため、複数の会社から意見を聞くことで、より客観的にご自身の家の価値を把握できます。
複数の不動産会社に査定を依頼し、それぞれの査定額だけでなく、その根拠や提示された売却プラン、担当者の対応などを比較検討しましょう。これにより、最も信頼でき、ご自身の希望に合った売却活動を進めてくれる不動産会社を選ぶことができます。一括査定サイトなどを活用するのも一つの方法です。
高額なリフォームをすること
家を売却する前に、少しでも高く売ろうと高額なリフォームを検討する方もいらっしゃいますが、これは一般的に避けるべき行動です。多くの場合、リフォームにかけた費用がそのまま売却価格に上乗せされて回収できるとは限りません。買主様はご自身の好みやライフスタイルに合わせてリフォームしたいと考えることが多く、売主様が行ったリフォームが必ずしも買主様のニーズに合うとは限らないからです。
むしろ、売却前に力を入れるべきは、大がかりなリフォームではなく、ハウスクリーニングや不用品の処分、水回りや玄関などの基本的な清掃、軽微な修繕です。清潔感があり、整理整頓された家は、買主様に良い印象を与え、内覧時の評価を高めることにつながります。構造上の問題や雨漏りなど、住む上で支障があるような大きな瑕疵がある場合は、修繕を検討する必要があることもありますが、それ以外は最小限に留めるのが賢明です。
家の売却に必要な書類を準備しないこと
家の売却手続きは多くの書類が必要となります。これらの必要書類を事前に準備しておかないと、売却活動がスムーズに進まず、契約や引き渡しが遅れてしまう可能性があります。特に、買主様との契約が成立した後で書類が不足していることが判明すると、手続きの遅延だけでなく、買主様の信頼を損ねてしまうことにもなりかねません。
売却に必要な主な書類には、登記済権利証または登記識別情報、固定資産税納税通知書、建築確認済証や検査済証、間取り図、耐震診断報告書、重要事項説明に必要な物件状況報告書や設備表などがあります。これらの書類はすぐに手元にない場合や、紛失している場合もありますので、売却活動を始める前にリストアップし、早めに準備に取り掛かることが大切です。紛失している場合は、再発行の手続きが必要になることもあります。
家の掃除や片付けを怠ること
家の売却において、内覧時の印象は非常に重要です。内覧に来られた買主様は、その家での生活を具体的にイメージしようとします。そのため、家が散らかっていたり、汚れていたりすると、買主様に不快感を与え、購入意欲を著しく低下させてしまう可能性があります。どんなに立地や間取りが良くても、第一印象が悪ければ売却は難しくなります。
内覧前には、家全体を徹底的に掃除し、不要な物を片付けて整理整頓することを心がけましょう。特に水回り(キッチン、浴室、トイレ)や玄関、窓ガラスなどは清潔に保つことが大切です。生活感あふれる荷物は一時的に収納にしまうか、トランクルームなどを利用して、すっきりとした空間を演出しましょう。明るく清潔感のある家は、買主様に良い印象を与え、スムーズな売却につながります。
家の売却活動中にやってはいけないこと
売却価格を相場より大幅に高く設定すること
家の売却活動において、売主様はできるだけ高く売りたいと考えるのが自然です。しかし、相場からかけ離れた高すぎる価格設定は、かえって売却を困難にしてしまいます。購入希望者は複数の物件を比較検討しているため、適正価格でない物件にはなかなか興味を示しません。結果として、内覧の機会が減り、売れ残る期間が長くなる傾向にあります。
長期間売れ残った物件は、「何か問題があるのではないか」という印象を与え、さらに買い手が見つかりにくくなります。最終的に値下げを余儀なくされ、結果として当初の希望価格よりも低い価格で売却することになるケースも少なくありません。適正な価格設定は、スムーズな売却と、最終的な満足度を高めるために非常に重要です。不動産会社の査定を参考に、周辺の取引事例や市場動向をしっかりと把握し、現実的な売却価格を設定しましょう。
担当者に任せきりにして連絡を取らないこと
不動産会社の担当者は、売却活動のプロであり、様々な業務を代行してくれます。しかし、だからといって全てを任せきりにして、売主様から一切連絡を取らないのは避けるべきです。売却活動の状況は常に変化しており、担当者との密なコミュニケーションが不可欠です。
定期的に連絡を取り、現在の販売状況や内覧の反響、購入希望者の動向などを報告してもらいましょう。疑問点や不安なことがあれば、遠慮せずに質問し、不明点を解消することが大切です。売主様が積極的に関心を持つことで、担当者もより責任感を持って売却活動に取り組むことができます。また、万が一トラブルが発生した際にも、早期に状況を把握し、適切な対応を取ることが可能になります。
内覧時の対応を疎かにすること
内覧は、購入希望者が実際に物件を見て、購入を決断する上で最も重要な機会の一つです。この内覧時の対応を疎かにしてしまうと、せっかくの売却チャンスを逃してしまうことになりかねません。物件の第一印象は非常に重要であり、内覧時に購入希望者が感じる印象が、その後の購入意欲に大きく影響します。
内覧前には、家全体を徹底的に掃除し、整理整頓を心がけましょう。特に水回り(キッチン、浴室、トイレ)は清潔感を保つことが大切です。また、部屋を明るく見せるために、照明をつけたり、カーテンを開けたりする工夫も効果的です。購入希望者からの質問には、丁寧かつ正直に答えるようにしましょう。物件の良い点だけでなく、気になる点も正直に伝えることで、信頼関係を築くことができます。また、プライバシーに配慮し、見学者が落ち着いて物件を見られる環境を整えることも重要です。
物件の欠陥や不具合を隠すこと
売却する物件に雨漏りやシロアリ被害、設備の故障など、何らかの欠陥や不具合がある場合、それを購入希望者や不動産会社に隠すことは絶対にやってはいけません。売買契約後、これらの欠陥が発覚した場合、売主様は「契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)」を問われる可能性があります。
契約不適合責任とは、売却した物件が契約内容に適合しない場合に、売主様が買主様に対して修理費用や損害賠償、場合によっては契約解除などの責任を負うことです。これにより、予期せぬ大きな金銭的負担や、法的なトラブルに巻き込まれるリスクが生じます。売却前に物件の状況を正確に把握し、告知書に正直に記載して、不動産会社を通じて購入希望者に伝えることが重要です。事前に伝えることで、トラブルを未然に防ぎ、双方にとって安心できる取引へとつながります。
売却を急ぎすぎて焦って決断すること
家の売却には、様々な事情から期限が設けられることもありますが、売却を急ぎすぎるあまり、焦って決断を下すことは避けるべきです。焦りから判断を誤り、不利な条件で契約してしまったり、本来得られるはずだった利益を逃してしまったりする可能性があります。
例えば、複数の購入希望者からのオファーがあった際に、十分に比較検討せずに最初のオファーに飛びついてしまったり、値下げ交渉に安易に応じてしまったりすることが挙げられます。また、信頼できない不動産会社の甘い言葉に乗せられて、相場より大幅に低い価格で売却してしまうケースも考えられます。売却活動中は、常に冷静な判断を心がけ、不動産会社の担当者とよく相談し、納得のいく条件で契約を進めることが大切です。急ぐ気持ちは理解できますが、長期的な視点を持って、最善の選択をすることが成功への鍵となります。
家の売却契約後にやってはいけないこと
引き渡し前の残置物を放置すること
家の売却契約が完了し、いよいよ買主様への引き渡し日が近づいてきたら、売主様には物件を空にして引き渡す義務があります。この引き渡し前に、不要な家具や家電、その他の残置物を放置したままにしておくと、買主様との間で思わぬトラブルに発展する可能性があります。
具体的には、買主様が予定していた入居やリフォームが遅れたり、残置物の撤去費用を請求されたりするケースも考えられます。不動産売買契約書には、通常、引き渡し時には物件を「空家」として引き渡す旨が明記されていますので、この義務を怠ると契約違反となり、損害賠償を求められる可能性もあります。
引き渡し前に、ご自身の荷物や不用品はすべて撤去し、家の中をきれいに片付けておくことが重要です。もし、買主様が引き取りを希望する家具などがある場合は、事前に書面などで合意を形成し、トラブルを未然に防ぎましょう。不要なものは早めに処分計画を立て、引き渡し期日までに確実に撤去を完了させてください。
確定申告を怠ること
家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、原則として売却した年の翌年に確定申告を行い、譲渡所得税を納める必要があります。この確定申告を怠ると、税務署から指摘を受け、本来納めるべき税金に加えて、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課せられることになります。
また、売却によって損失が出た場合や、特定の要件を満たして税金がかからない場合(例えば、居住用財産を売却した場合の3,000万円特別控除など)であっても、これらの特例や控除の適用を受けるためには確定申告が必要です。申告をしないと、これらの税制優遇措置を受けることができず、不利益を被る可能性があります。
家の売却に関する確定申告は、通常の確定申告よりも複雑な場合があります。売却した年の翌年2月16日から3月15日までの申告期間を忘れずに、必要書類を準備し、正確な申告を行いましょう。不安な場合は、税務署の相談窓口や税理士に相談することをおすすめします。
税金に関する知識がないまま手続きを進めること
家の売却には、譲渡所得税、住民税の他に、売買契約時に印紙税、登記手続きで登録免許税など、様々な税金が関係してきます。これらの税金に関する知識がないまま手続きを進めてしまうと、本来受けられるはずの特例や控除を見落とし、必要以上に多くの税金を支払ってしまう可能性があります。
例えば、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」や「特定の居住用財産の買換え特例」、「相続空き家の3,000万円特別控除」など、売却状況に応じて適用できる税制優遇措置がいくつか存在します。これらの特例を適用するためには、それぞれに細かな要件があり、事前の準備や正しい知識が不可欠です。
売却契約が成立した後も、税金に関する情報は常に確認し、不明な点があれば不動産会社の担当者や税理士などの専門家に積極的に相談しましょう。適切なアドバイスを受けることで、節税対策を講じ、安心して売却後の手続きを進めることができます。税金は売却の最終的な手取り額に大きく影響するため、軽視せずにしっかりと向き合うことが大切です。
まとめ
家の売却で失敗を避けるには、各段階のNG行動を把握することが重要です。売却前は「相場を調べず一社のみに依頼すること」や「高額リフォーム」を避け、清掃を徹底しましょう。活動中は「不具合の隠蔽」や「担当者への任せきり」は厳禁です。契約後は「残置物の放置」や「確定申告の失念」に注意してください。これらを回避し、誠実な対応と適切な準備を心がけることで、トラブルのない納得のいく売却が実現できます。



